NCIS: ニューオーリンズ (S2E20)

Second Line / セカンドライン

予備役兵ジェームズ・ボイドのセカンドラインを路地から撮影していたマレー大尉が殺害される。カメラからはメモリーカードが消え、本体に残っていた写真からも手がかりは得られない。ラサールとソーニャがマレー大尉の家を調べていると、ラサールの背後に銃を持った侵入者が現れ……。(スーパー!ドラマTVサイトより引用)   

 

セカンドライン」というと何だかブランドものの廉価シリーズみたいですが、ここではニューオリンズ固有の文化・風習のお話です。

私が知る限りニューオリンズ独特の習慣なのですが、ここでは人が亡くなると遺族たちが楽隊とともに列をなして棺を墓地まで運びます。この時に楽隊が演奏するのは静かな悲しい音楽で、葬列は"first line"と呼ばれるそうです。そして墓地で棺を埋めた後の帰り道は、うって変って陽気な音楽を演奏するのです。この時は近所の人たちも(亡くなった人と縁や面識など一切なくても)列に加わり、一緒に踊ったり歌ったりしながらパレードします(first lineは基本的に近親者などの招待者のみしか参加できないらしい)。そしてこの列を"second line"と呼び、ここで演奏される音楽やリズムが、いわゆるニューオリンズ音楽の根源みたいなものになっています。オリジナル(英語)での台詞には出てきませんでしたが、字幕ではこのお葬式は「ジャズ葬」となっていました。実際、このお葬式は"Jazz Funeral"とも呼ばれています。

歴史的な話はよく知りませんが、ロレッタの話では奴隷時代が発祥だそうですね。ニューオリンズ音楽は奴隷たちの故郷(主に西アフリカ)の音楽と西洋の音楽が出会ってできたと言われているので、実際そうなんじゃないかと思います(ニューオリンズ音楽好きの間だけかもしれませんが、「セカンドライン」というと、いわゆる2ビートのニューオリンズ独特の音楽自体を指すことも多いです)。明るい音楽が演奏されるのは、ロレッタが言うように「墓地からの長い道のりを楽しむため」という要素もあるのでしょうが、「死によって苦しみから解放されたことを祝う」意味があると聞いたこともあります。今回のエピソードでは「生きていることを祝福する」という考え方もでてきました。メンバーそれぞれの死生観も垣間見えて、とても興味深かったです。

 

地元民のお葬式に限らず、例えば昨年はAretha Franklinが亡くなった後にニューオリンズでもセカンドラインが行われたそうです。

そしてセカンドラインは今やお葬式に関係なく、夏の数ヶ月を除いた日曜日に街のどこかしらで行われており、ネットで検索するとスケジュールやパレードのルートなども出てきます。2005年のハリケーンKatrinaの直後はしばらく中止されていたようですが、約3ヶ月後に初めて再開した時、その音楽に街の人たちがとても励まされたそうです(が、昔聞いた話なのでソース忘れました…)。それに結婚式で行われる楽隊のパレードもセカンドラインと呼ばれたりしています。そんな感じなので、「人が死んだのに騒ぐのがイヤだから参加したくない」というラサールやセバスチャンのセリフは厳密にはちょっと違うかなぁという気はします。

 

前置きが長くなったけど、オープニングのボイド予備兵のセカンドラインが行われたのはSt. Louis St、演奏は19世紀から続く老舗ブラスバンドOnward Brass Bandでした。曲は有名な「聖者の行進(When the Saints Go Marcin' in)」。

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放送当時のバンドのTwitter写真にはキングもちょっと写り込んでる: 

 

殺されたマレー大尉は軍の臨床心理士で遺族支援官(CACO)。検視によると大柄な男に絞殺されたようです。マレーはボイドの死の際に遺族(妻アメリア)に訃報を伝えたりしていた。アメリアの父はキングと保安官時代一緒に仕事をしていたようですね。相変わらず顔の広いキング。色々問題があったボイドは人生やり直すために入隊したが、任務中に交通事故で亡くなったのだとか。

 

ラサールとパーシーが大尉の家を訪ねると男がいてラサールに銃を向けますが、銃弾は不発で男はもみ合いの末逃走。その時に落としていった袋には古い人骨が入っていた。大尉の家から盗もうとしたらしい。ラサールのアザをロレッタが診るために胸毛や腹筋がお披露目されたのはファンサービスですかねー(ついでに言えば終盤で警備員のコスプレも)。

 

キングとブロディは大尉の上官を訪ねてBelle Chasseへ。職場のNaval Clinicは外観だけですが、Algiers Auditoriumというイベントスペースが使われていました。

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ここから話しながらGuadalcanal Stを進んで、S1E13放射性物質で分析医が殺された事件)でも出てきた建物もちらっと登場。

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ボイドは大尉のカウンセリングを受けていたようです。大尉は殺されるような人間じゃないし、人骨に心当たりもなさそう。

 

ラボではDNA鑑定で、人骨は約300年前のバティスト(Baptiste)家の人間と判明します。セバスチャンはS1E20でも着ていたHansen's Sno Blizの記念Tシャツを着てました。このTシャツ、もう手に入らないんだろうけど可愛いよなー。

バティスト家とはニューオリンズの名付け親であるJean-Baptiste Le Moyne de Bienvilleの一家のことで、その末裔カール(Karl Baptiste)は今もプランテーションの邸宅に住んでいるそうです。Jean Baptisteは1700年前後に実在したカナダ生まれのフランス系入植者で、その後フランス領時代のルイジアナの知事となり、ニューオリンズやフレンチクオーターの名付け親らしいです。

カールがNCISメンバーと落ち合った墓地はMetairie Cemetery、名前はMetarieですが厳密にはニューオリンズ内にあるそうです(Wikipediaには間違えて名付けたとか…適当だな)。ただ、調べた範囲では本物のバティスト家のお墓はなさそうでした。

先祖の骨が持ち出されたということで墓荒らしの可能性もあると中を確認すると、お墓の内部はすべて持ち出されていた。そして周辺で様子を伺っている怪しい人物をラサールが捕まえたところ、大尉の家でラサールを襲った男ハンソンだった。ハンソンはTreme育ちのボイドの古い友人で、お金に困ったボイドに墓荒らしを誘われたらしい。盗品をボイドが預かって一旦別れたが、落ち合う前に事故死、その2日後にマレー大尉が訪ねてきたため盗品を狙ってるのだと思い、尾行して大尉の家から骨を盗もうとしたんだそうです。骨は盗品の鑑定書代わりなのでどうしても必要だと。なるほど。

ちなみにTreme(トレメ)は世界初のゲットーなどとも呼ばれる地区で、昔はかなり治安が悪かったそうですが、Kermit RuffinsやTrombone Shortyなどを始め昔から素晴らしいミュージシャンを育てて輩出してきた地域でもあります。ただKatrina以降住民の人口構成も変わってしまい、またHBOでヒットしたドラマなどの影響で今は結構観光客も増えたりして、良くも悪くも変わりつつあるようです。

ハンソンの取り調べの最中にラサールを撃とうとした話になりますが、ラサールはこのことを黙っていたためパーシーが「死んでたかもしれないのに、なんでそんな大事なこと黙ってたの!」と激怒。キングも死を見慣れすぎて感覚が麻痺しているんじゃと諭します。

 

大尉はボイドの墓荒らしなど調べている最中に殺されたのだろう。オーリンズ郡(Orleans Parish)にボイドの検視報告書の控えを請求していたのでロレッタとキングがオーリンズ郡のベラミー検視官を訪ねます。Orleans Parishってフレンチクオーターも含むいわゆる「ニューオリンズ市」一帯の広い範囲なようで、ロレッタの勤めるジェファソン郡より予算とかありそうな感じなのになー。

それはともかく遺体をロレッタが見直すことになったが、棺は空で、内部の灰のDNAもボイドのものではなかった。そしてセバスチャンが、大尉が殺される直前に撮影していたセカンドラインの写真にボイド自身が写っているのを見つけます。ボイドはギャンブルで借金を抱えており、墓荒らしをして死を偽装するほどに追い詰められていたようです(ここでは詳しく触れませんが、その罪をカールに着せるための細工までしていた…んだよね?)。自分のお葬式に誰が来るか知りたいからセカンドラインには顔出すだろうって、確かにありそう。

ベラミーがお小遣い稼ぎに死の偽装に協力(ロレッタに問い詰められて捕まった場所、多分だけどCity Parkじゃないかな…)、盗品を売るための骨を盗むべく再び墓荒らしに入ったボイドを捕まえて解決しました。ボイド全然人生やり直せてないし…。

 

ちなみに、ラサールが撃たれかけたのを黙っていた件は、結局彼が謝罪して解決。心配してくれたことを感謝すると。パーシーは、自分が過去と向き合うのを助けてくれたお返しだと言う。確かにS2E16のマリオンの事件の時は、ラサールがかなりパーシーを支えてた感じでした。

 

エンディングで行われた大尉のセカンドラインですが、場所は冒頭と全く同じ場所(St. Louis St)だったので多分同時に撮影したのでしょう。ただバンドは「YPS」という帽子をかぶっていたのとスーザフォンの「TUBA」のステッカーからYoung PinStripe Brass Bandじゃないかな。ロレッタの持っていた傘や、他のメンバーがひらひら振ってた白いハンカチもセカンドラインのパレードでよく見かけますが、何の意味があるのかはよく知りません…じゃつまらないのでちょっと調べてみたところ、あまりハッキリしたことは判りませんでしたが、傘の起源はおそらく女性がパレードで外を歩く際の日除けで、ハンカチは南部の紳士たちがポケットチーフとして使っていたのを取り出して振ってたとか、そんな感じみたいです。

あれだけ頑なにセカンドラインは行かないと言ってたラサールも、最後は顔を出して、仲良くパレードしてました。